長期化する中東危機~価格安定策(ガソリン補助金再開)より節減策に早期に転換すべき(#ブログ056)
- 竹本 治

- 3月29日
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政府は、中東危機の勃発を踏まえ、ガソリン補助金の再開と、過去最大規模となる石油備蓄の放出を決定したが、紛争が長期化する可能性が既に高まっている中では、短期的な価格安定策を講じることよりも、国内における石油の節減策に早期に舵を切る方が賢明である。(ソーシャル・コモンズ 竹本治)

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米国・イスラエルによるイラン攻撃に始まった中東危機は、長期化する可能性が高まっている。そして、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖されている。日本向けに原油を積んだタンカーが最後に海峡を通過したのは攻撃開始直前の2月末であり、既に原油輸送が大幅に減少する局面に入っている。わが国は原油輸入の大半を中東地域に依存しており、そのほとんどがこの海峡を通過する。代替ルートの確保や他国からの調達も模索されているが、中東依存を完全に穴埋めすることは不可能である。仮に戦争が早期に終結したとしても、海峡の安全が確保されるまでには、さらなる期間を要するであろう。原油調達に苦労する時期は、少なくとも相当の期間続く可能性が高い。
こうした危機的状況の中、政府はガソリン補助金の再開と、過去最大規模となる石油備蓄の放出を決定した。しかし、こうした「価格安定」を主眼とした政策は妥当ではなく、むしろ、これらは長期的なリスク管理としては極めて脆弱な政策対応といえるのではないか。ガソリン補助金で今日の消費生活を支え、石油備蓄を食いつぶす「対症療法」を続けるのは、持続可能ではない。

まず、「ガソリン補助金(注)の再開」であるが、ガソリン価格を人為的に抑制すると、国民は外出等を控えようとせず、結果として原油の需要を助長してしまう。喫緊の課題は、1970年代の石油ショックのような「価格の急上昇」ではなくて、「量そのものの確保が出来なくなる」ことである。原油不足が目の前に迫っているのに、価格上昇の抑制を優先するのは、エネルギー安全保障の点でかなり危うい政策である。
(注)政府はウクライナ戦争勃発以降、ガソリンの店頭価格を抑えるため、累計で9兆円規模にも上る巨額の国費を投じてきた。ガソリン補助金は、一見すると、国民の生活支援の点で一定の効果があるようにみえる。しかし、支援がかなり偏ること、本来抑制すべき需要にブレーキをかけないこと、財政負担が巨額になる(その割に政策効果は小さい)こと、といった大きな問題があった。

しかも、原油は単なる自動車の燃料ではない。例えば、原油から精製されるナフサは、プラスチック容器、家電、建材、衣類、タイヤなど、私たちの日常生活を支えるあらゆる石油製品の原材料である。石油確保が難しくなると、エネルギー不足に留まらず、国民生活全般に多大な影響が出ることは、素人でも想像がつくことである。

次に、「石油備蓄の放出」についてである。政府は国家備蓄1ヶ月分を含む大規模な放出に踏み切った。これは、当面の供給不安や社会のパニックを抑える点では一定の効果は期待できる(パニックの予兆はないが)。しかし「虎の子」である石油の備蓄を早々に放出することは、短期的なショックへの対応としては有効であっても、長期的には悪手となる。

むしろ、日本が取るべき道は、アジア諸国のように、国際情勢の厳しさを国民に共有し、早い段階から「節減モード」に粛々と入っていくことではないか。
例えば、スリランカやタイでは給油制限や公共機関の休業といった強制的な措置を導入し、韓国やフィリピンでも大統領主導の省エネ運動や非常事態宣言を通じて、早期から需要抑制を狙う政策を採用しているとのことである。もちろん、こうした国々では、早々に石油不足に直面していて、そうせざるを得ない状況に置かれているから、そうした強い政策対応を行っているわけであるが、それは明日の日本の姿でもある。しかし、日本では、国際紛争が短期間に解決することを期待して、「節約(需要抑制)」よりも「価格安定(補助)」を優先した政策をとっているようにみえる。

厳しい国際情勢が長期化した場合、節減対応への切替が遅れれば遅れるほど、備蓄は早期に底をつきより厳しい強制措置をとらざるを得なくなる。国民一人ひとりが現状の危機を正しく認識し、社会全体で石油・エネルギーの消費を減らしていく「節約主導型」の政策こそが、石油不足の長期化・深刻化という不測の事態、国際社会の大混乱から国を守る、現実的な防衛策となるのではないか。



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