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牛乳を飲むと背が伸びるのか?(新型コロナ対策とEBPM)(コラム#003)

緊急事態宣言は、久しぶりに解除の運びとなった。新型コロナ対策は、依然迷走している印象があるが、政府・自治体としては、「EBPM(証拠に基づく政策立案、Evidence-Based Policy Making)」の基本的な考え方に立ち返って、政策を行う理由を丁寧に説明するとともに、事後的な検証もきちんと行うことで、国民の信頼を勝ち取っていくことが重要である。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本治)

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 長かった緊急事態宣言も9月30日にようやく解除された。緊急事態宣言等は、日々の生活に大きく影響するだけに、人々の関心もとても高い。国民としては、費用対効果の点でも「一番適切」で「科学的」なコロナ対策を進めてほしい、と政府・自治体に強くのぞむのは当然である。


 新型コロナ対策をみると、(これとて決して万能な対策ではないものの)ワクチン接種はようやく軌道に乗ってきた感はある。一方、「人流抑制策」については、飲食店等の営業時間短縮、大型イベントの自粛、リモートワークの推進などが進められてきたが、対象とする業界や規模等については迷走しがちであるし、政策的メッセージが混乱していた印象が非常に強い。感染の拡大や重症者数の増加を抑制するという目的に対して、果たして効果が十分期待できる対策なのか。国民としては、「シンプルで、矛盾の少ない」説明がほしいところである。


 仕事柄、「『EBPM(証拠に基づく政策立案、Evidence-Based Policy Making)』って、何ですか?」と聞かれることがしばしばある。「『牛乳を飲めば、背が延びるか?』を、考えるようなものですよ」と答えるようにしている。


 牛乳を飲めば、確かに、背が伸びるような「気」はする。しかし、それだけで、背が伸びてほしいと思う子供に対して「牛乳を飲みなさい」ということはできないであろう。牛乳を飲んでも背が伸びないかもしれない。仮に伸びたとしても、偶然ほかの要因が影響しただけかもしれない。十分な睡眠や運動、ほかの食べ物の方が効果的かもしれない。このように、「牛乳を飲むこと」に果たして意味があるのかについては、色々突っ込みどころはある。だからこそ、因果関係や効果があるのかを、(手持ちの材料で精一杯)考えないといけないのである。


 こういった場面は、行政ではしばしば遭遇する。実社会では、医薬品における治験のように前提条件を整えた実験はなかなかできない。また、パンデミックの真っ最中などでは、数年間もかけて検討する暇もない。本当に効果があるのかどうか?悩みながらも、とにかく政策を打っていくしかないのである。


 それでも、政府・自治体は、国民に「なぜ自分はそれが効果的と思うのか」を丁寧に説明すること、そして、「実際やってみたら、想定通りだったのか、ダメだったのか」をきちんと検証することはできるはずである。そして、そういうことを地道に積み重ねていって、国民の信頼を勝ち取ることが大切である。



 さて、牛乳嫌いな子供に「牛乳飲むって、意味あるの!本当にそれで背が伸びるの?」と聞かれたら、どうしますか?


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