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マイナ保険証の利用促進に向けて~ウサギはペンギンのように愛されるようになるか(コラム#053)


 従来の健康医療保険証は今月から新たに発行されなくなり、「マイナ保険証」に切り替わったが、マイナ保険証を国民に納得感をもって利用してもらうためには、(1)なりすまし・不正利用の防止や、(2)医療機関・健康保険組合の事務負担軽減といった、デジタル化の国民経済全体へのメリットを積極的に示していくべきである。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本治)



 マイナンバー・カード(以下、「マイナカード」)については、かつては普及の遅れや利用への不安が声高に叫ばれた時期もあったが、マイナカードの保有枚数は、2025年11月末時点で約1億枚(総人口比で8割以上)となった。そして、マイナカードの保険証利用(以下、「マイナ保険証」)についても、従来の紙の保険証が廃止される中で、マイナカード保有者の約9割(総人口比では7割程度)が登録を済ませている。


 マイナカードについては、さすがにほぼ全世帯にいきわたったことから、今後は、「マイナ保険証を、インフラとして定着させていくこと」が重要な政策課題となる。


 紙の保険証からマイナ保険証の切替えにおいては、国民から少なからぬ反対意見がみられた。例えば、医療機関でのカードリーダーの不具合や、他人の情報が紐付けられるといった人為的ミスへの不安は、SNSやニュースのコメント欄でもたびたび話題となった。


 そうした不便や不満の声が上がったことを受け、マイナ保険証を保有しない層向けに、(紙の)「資格確認書」が限定的・時限的に導入されることとなった。特に、後期高齢者(約2,000万人)に対しては、トラブル未然防止の観点から、資格確認書(2026年7月末まで有効)を、マイナ保険証を既に登録した層(約1,300万人)を含めて一斉発行することとした。



 資格確認書の発行は、セーフティネットとしては合理的な部分がある。しかし、社会インフラのデジタル化は全面的に推し進めてこそ、真の効率化を達成できる。資格確認証は、現在でも例外的・暫定的な措置とされているが、出来る限り早くマイナ保険証への一本化を推進すべきである。


 さはさりながら、我が国は強権国家ではない。このため、マイナ保険証の利用についても、国民の納得感を高め、利用を促進していくしかない。今後とも、利用者・患者に対しては、以下のメリットを粘り強く、丁寧に説明していくことが重要となる。

 

 (1)なりすまし・不正利用の防止:従来の紙の健康保険証には顔写真がなく、紛失や盗難による他人の不正利用や、プリンターによる偽造といったリスクが常に存在していた。これに対し、マイナ保険証はICチップ内の電子証明書と顔認証を利用して本人確認を行う。これにより、偽造は困難となり、なりすましによる不正受診を確実に防ぐことができる。


 自分のキャッシュ・カードやクレジット・カードについて、不正利用防止の観点からICチップを搭載したり、利用の際に暗証番号を必要としたりすることに反対する人はいないであろう。健康保険証だけを、従来のように紙のもの(資格確認書)を使い続けることには、やはり無理がある。この点については、もっと積極的に説明していくべきである。



(2)医療機関・健康保険組合の事務負担軽減:医療機関にとって、窓口業務の簡素化は非常に大きなメリットとなる。従来の目視確認や手入力による資格確認が自動化され、事務コストが削減されるだけでなく、退職済み等の「資格喪失者」による受診を即座に判別できる。こうしたことから、レセプト(診療報酬明細書)の返戻や未収金に伴う再請求事務、患者とのトラブルも大幅に減少する。また、高額療養費の限度額適用も自動で反映されるため、煩雑な書類の確認・保管・計算からも解放されることとなる。


 健康保険組合でも、物理的なカードの発行・郵送・再発行にかかる莫大なコストを抑制でき、資格喪失後の不正利用や過誤請求をリアルタイムで防止可能となる。


 これに対し、代替手段である「資格確認書」を併用してしまうと、こうした事務効率化のメリットは大きく減殺されてしまう。むしろ、医療現場にはアナログな二重運用の負担と、コストとが残り続ける。社会全体の事務コストを下げ、より質の高い医療体制を維持するためには、マイナ保険証への一本化が合理的である点は、もっと周知されるべきである。


 当然ながら、デジタル化は、それ自体が目的ではない。マイナカードやマイナ保険証をインフラとして使いこなすことで、業務の無駄を省き、より便利で安全な医療を享受できる社会を作っていけるのである。


 すでにマイナ保険証の利用により、受付での待ち時間短縮や、確定申告における医療費控除の自動入力といった実利が生まれている。さらに、医師が過去の薬剤情報を共有することで、重複投薬を防ぎ、より質の高い医療を受けられるメリットも実証されている。



 上述の事務合理化効果についても、それを定量化した上で、国民に直接的なメリットとして明示的に還元すべきであろう。例えば、不正利用された額や事務コストの削減分を反映させ、僅かな額であっても保険料を引き下げることに繋げられれば、これまで反対してきた人々の間でも納得感が高まり、マイナ保険証は「当たり前のインフラ」として日本の医療を支える確かな基盤となるだろう。現在も、診療報酬上、マイナ保険証を利用することで従来の保険証より医療費が安くなるように設定されているが、さらに踏み込んだ還元策が示されれば、「自分ごと」としてデジタル化の恩恵を実感しやすくなる。


 多くのユーザーに愛されたSuicaのペンギンは、惜しまれつつも、25周年の節目に新しいキャラクターへとバトンタッチするとのことである。Suicaが導入される以前になるが、駅の自動改札機の導入当初には、切符の詰まりや利用についての混乱があった。しかし、いまや誰もがその利便性を疑わない。自動改札化の発展形であるSuicaなど交通系のICカードはもはや生活の一部となった。


 

 マイナンバーのキャラクターのウサギ(マイナちゃん)も、マイナカードやマイナ保険証が、利用者の利便性を高め、社会全体の安全・安心と効率化に寄与していけば、もっともっと親しまれる存在になっていくはずである。



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