「GO TO」選挙~「旧統一」との「訣別」(コラム#021)
- 竹本 治
- 2023年4月29日
- 読了時間: 4分
地域経済が疲弊し、物価高や少子化もどんどん進んでいる。それなのに、有権者の関心は低く、今月行われた統一地方選挙では、投票率がさらに低下し、無投票当選も一段と増えた。かなりばらばらになってしまった選挙日程を、再度「統一」するなど、積極的にアイディアを持ち寄って、今の状況を打破していくことが望まれる。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本)

統一地方選挙が4月9日(前半)と23日(後半)に行われた。選挙結果についてはここでは論評しないが、投票率がさらに低下し、また、無投票当選のところも一段と増えるなど、憂慮すべき点が多い。
まず、投票率をみてみると、市長選(政令指定都市を除く)では、前回比+0.2ポイントとほんのわずかに上がった。しかし、それ以外の選挙については、軒並み投票率が下がり、過去最低を更新した。また、特に市町村の首長・議会議員選挙では、無投票当選となるところが大変多くみられた。

(出典:総務省)
いずれの指標も、民主主義の根幹をなす選挙制度がうまく機能しなくなっていることを示している。この国では、限られた人しか投票しないようになってきている。命をかけて「普通選挙」を実現しようとしてきた先人達がみたら、きっと大いに嘆くことであろう。

地域経済の疲弊はもちろんのこと、物価高や少子化もどんどん進んでいる。それなのに、有権者の関心は低く、住んでいる地域の政策の方向性を決めるための地方選挙の投票率が下がっている。
そんな状況を打開させるための妙案はないのか。短期間で実現できるような改革案が見つからないとしても、投票率等の改善のために、積極的にアイディアは持ち寄るべきである。過去にも関係者で議論はされてきたが、今一度、真剣に考える時期にあたっている。

いくつか私見を述べてみたい。
1)まずは、「統一率」(統一地方選挙で実施される選挙の割合)の引上げである。統一地方選挙は、1947年(昭和22年)4月に1回目が実施されてから、今回で20回目となった。普通選挙が始まった当初は真の意味で「統一選挙」であったが、「統一率」は平成大合併を経て、今や27.54%まで下がっている。
今後は、時期がばらばらになっている地域の選挙については、次回・次々回の任期を3年とか5年とかに調整していくことで、「統一選挙」の時期に出来る限り合わせていくべきであろう。臨時特例法では、統一地方選挙日の近くに任期満了日がくる議会等の選挙は選挙日をあわせることになっているが、その対象期間を思い切って広げることで、実現は可能である。「統一率」が上がれば上がるほど、「地元の選挙」が「全国的なイベント」となって、有権者の関心も高まるはずである。そもそも、戦後始められた「統一選挙」の目的はそこにあった。今こそ原点回帰すべきである。

(総務省資料・各種報道より、筆者作成)
2)次に、「オンライン選挙」の実現である。期日前投票で投票する比率は随分高くなったようであるが、デジタル化を進めている中で、選挙民が投票するための利便性は一段と高めるべきである。特に、選挙のオンライン化は、地元から離れて暮らしている学生等、若い世代の投票率を上げるための重要なツールともなりうる。

3)そして、議員の成り手不足については、①定数を削減した上で、その分、議員報酬を引き上げたり、あるいは、②本業と両立しやすい日程で議会を開催するなどの措置を講じたりする工夫が必要である。その上で、③女性議員比率の引上げのために、クオータ制も取り入れるべきであろう。
無投票当選は、人口減少が進んだ結果でもある。まずは、人口比過剰気味になっている議員の定員を思い切って見直してはどうか。また、無投票が多い地域は、女性議員が少なく、議員の平均年齢が高いところが目立っているので、その点からも抜本的な改革が必要である。

(出典:総務省)
4)最後に、「ボートマッチ(vote match)(注)」の普及である。市区町村議会の議員選挙では、大勢の候補者が出てくる(自治体の規模によっては数十人にもなる)。このため、各種政策についての候補者の考えを比較することは、実は簡単ではない。杉並区で「官製ボートマッチ」を作る試みが今回実現しなかったのは、制度面・実務面での課題があったためとはいえ、候補者を政策本位で選ぶためのツールを補強することは非常に重要である。ポスターの印象や選挙カーでの連呼などが決め手になってしまう旧来型の選挙のままでは、選挙民の関心も高まらない。
(注)選挙の争点となる問題について、あらかじめ候補者に質問しておき、個々の有権者の方も、同様の質問項目に回答することで、大勢の候補者の中から、自分の考えに近い候補者や政党を知ることができるようにする仕組み(考え方としては、「マッチング・アプリ」に近い)。

(出典:総務省)
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自分の住んでいる地元議会の議員選挙では、実は応援したい候補者が複数名いたので、投票する際には大変困ってしまった。幸い、全員当選したのでほっとしている。
住民本位の政策の実現を期待したい。
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